研究概要 |
複数台の映像プロジェクタを組み合わせて大画面高精細画像を投影するシステムがある.個々のプロジェクタの解像度を台数分合計した,高解像度を実現できるため,今後の利用が期待されている.この種のシステムにおいて最も重要となるのが,最終的に生成される投影像の画質を左右する,システムのキャリブレーションである.このキャリブレーションには,2種類あり,一つが複数の異なるプロジェクタが投影する,個々の画像同士がきれいにつながるようにするための「位置合わせ」であり,もう一つが,そのようにつなぎ合わされた画像が正しいアスペクト比の正確な長方形となるようにするための「正規化」である.キャリブレーションには通常カメラを別途用い,カメラで撮影した画像が利用される.従来は,キャリブレーションの2要素のうち,「位置合わせ」についてはカメラを使った方法で実現されていたが,「正規化」は,投影先となるスクリーンの形の情報や,あるいはプロジェクタに別途取り付けた角度センサなど,カメラの画像以外の事前知識や他の情報を必要としていた・本研究では,位置合わせに加えて正規化についても,カメラで撮影した画像のみで行えることを理論的に証明するとともに,そのための具体的なアルゴリズムを導いた.これにより,プロジェクタをただ雑然と並べた後,キャリブレーション用のパタンを各プロジェクタから投影させた後,それを手持ちのカメラで一枚画像を撮影すれば,その画像のみから上述の2種類のキャリブレーションを同時に,完全に実行できるようになる.このことは,複数の映像プロジェクタによって大画面高精細画像を生成するシステムの利便性を大幅に高める.この結果,通常のフラットパネルディスプレイでは実現が難しいような,超高精細の画像を,身近なものとすることが期待される.
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