研究概要 |
離れた地点間を結び講義を行う遠隔授業は,通常の講義形式と異なり,講師が注目して欲しい箇所を受講者に伝えることが困難である.そこで本研究では,ぼけ処理を応用した遠隔授業のための視点誘導システムに関する研究を行った.それは,講演者が着目して欲しい領域はぼけのない画像とし,それ以外の領域を意図的にぼかすことで,意図的に受講者の視点を誘導するものである.本研究では次のような研究成果を得た: (1)講演者が指示するレーザポインタの位置を画像処理によって自動追尾し,注視領域を自動的に抽出する方法 (2)ぼけ処理等を加えることにより視点を誘導する方法 成果(1)は,レーザポインタ特有の性質を利用することにより得られた.レーザは単波長の光であり,その波長は電球,蛍光灯,液晶プロジェクタ等から生成される光の波長とは異なる.また,その強度(輝度)もまた大きく異なり,極めて強い.従って,講義映像の色成分および輝度成分に対して,カルーネンレーベ変換あるいは線形判別分析を施せば,映像の中のレーザポインタスポット位置を分離できる.なお,これらの処理はリアルタイム処理が十分可能な演算量で実現できる.成果(2)は,人間の視覚が備えている機能を応用することにより得られた.人間が映像を観るとき,映像中に焦点の合っている領域に自然に視点を持ってゆく.従って,注視領域以外にぼけを加えることにより,強制的に視点を誘導できる.注視領域の判定は,先の成果(1)ですでに実現できている.なお,長時間の講義において,この「ぼけ」による視点誘導は,受講者にも依存するが,大変疲労感をおぼえることがある.従って,疲労感を与えにくい「ぼけ」以外の注視処理についても今後検討する必要がある.
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