研究概要 |
本研究の目的である,特定ユーザの嗜好を反映したデータからそのユーザの嗜好を獲得・模倣する数理モデルを構築するためには,多様な構造を持つデータから,ユーザの価値判断のポイントとなる規則性を見出す必要がある.また,実データを取り扱うためには,データの欠損等に起因する不完全な情報に対しても頑健なモデルでなければならない.今年度はこれらの課題を踏まえ,嗜好学習システムの構築の一環として,昨年度に構築したオブジェクト指向ラフ集合モデルを改良し,多様な構造を持つデータ(オブジェクト)から規則性を見出すための決定ルール抽出に関する研究,およびオブジェクト指向ラフ集合モデルで不完全情報を取り扱うためのモデルの拡張に関する研究を行った.主な研究成果として以下が挙げられる: ・オブジェクト指向ラフ集合モデルにおける決定ルール抽出に関する研究では,オブジェクトの構造を踏まえ,オブジェクトを構成する部品の組み合わせ方に関する規則性を決定ルールとして抽出する手法を開発した.これにより,ユーザの価値判断のポイントとなる規則性をより具体的に記述することが可能となった. ・オブジェクト指向ラフ集合モデルにおける不完全情報の取り扱いとしては,オブジェクトを構成する部品の欠損に基づく不完全情報およびオブジェクトの構造の相違に起因する不完全情報を扱うためのモデルの拡張を行った.これにより,ユーザの嗜好を反映した実データをより円滑に扱えるようになり,不完全情報に対して頑健なモデルを構築することができた. また、オブジェクト指向ラフ集合モデルを用いた嗜好学習システムの実装については,現在,上述のモデルの改良を昨年度に試作したシステムに反映させる作業を行っている.評価実験については,昨年度のシステムによる予備実験を行っており,研究期間内での成果の公表には至らなかったものの,今後も継続して実施する予定である.
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