研究概要 |
我々はこれまでに,1次元2状態3近傍セルオートマトンのルール系列を用いて,ディジタル信号(発話データや音楽データ等)を完全可逆・圧縮記述できることを示した.本研究では,本手法で得られたルール系列が生み出すアトラクター構造の特徴を明らかにすることが,研究の目的である.特に,本年度は,完全可逆記述を与えるルール系列の動的特長をWolframの分類に従い明らかにすることを主な研究の目的として実施した.具体的には,記述を与えるルール系列が記述データの動的特性を反映し得るのかを明らかにするために,計算機シミュレーション実験を実施した.シミュレーション実験での記述対象データとして,(1)ロジスティック写像から生成される周期データ及びカオスデータを生成し,それに16bits量子化を施しディジタル化したもの,及び(2)16素子から成るCML (Coupled Map Lattice)モデルより生成される周期データ,部分同期データ及びカオスデータ,とした.得られた結果は,以下の通りである. (1)いずれの記述対象データの場合にも,動的特性が複雑になると(周期→部分同期→カオス),データの完全可逆記述を与えるルール系列から生成されるビットパターンも複雑になる傾向がある. (2)更には,生成されるビットパターンの周期が長くなる傾向がある. 以上の結果より,Wolframの意味で,記述を与えるルール系列が記述データの動的特性を反し得ることが明らかとなった.
|