研究概要 |
本研究の目的は,PID型制御系設計問題に対して,複数の制御仕様を考慮した設計手法を構築することにある。本年度は従来の様々な設計手法を参考に,制御仕様やその変更がダイレクトに表れる評価関数の定式化について研究を進めた。制御仕様の評価関数への定式化は,制御系設計問題において最も重要な部分の一つであり,PID型の制御系設計問題では,即応性と振動抑制性が制御仕様として考慮されることが多い。昨年度までの研究では,これら二つの制御仕様を極配置最適化問題として捉えることにより,多目的最適化手法を用いた設計手法について検討を行った。本年度はさらに,問題の制約条件と実行可能解が存在する探索領域との相互関係についても研究を進めた。また,実際のプラントは不確かさを持つため,プラントパラメータの変動を考慮したモデル化が必要である。これまでは,プラントの不確かさを多項式ポリトープで表現することにより,保守性を抑えてきた。本年度はこの表現方法の枠組みを活かして,より的確に表現する方法について検討を行った。評価関数の定式化ならびにプラントの不確かさの表現方法に関して改良を行った設計手法を用いることにより,これまでの試行錯誤的な調整方法と比べて,設計時間を短縮することが可能となった。これにより設計者の負担が軽減され,PID型制御系設計の効率化が期待される.本研究で得られた成果は9月にイタリアで開催されたNOLTA2006において発表した。
|