研究概要 |
1次元正規分布の平均の非負の下での最尤推定量について,バイアスやステューデント化したときの分布をリサンプリング法によって推定する問題を理論的に考察した。 まず,ステューデント化した最尤推定量の分布をリサンプリング法によって推定する方法を,(1)未知の真の分布関数を近似する,(2)解析的に計算できなければモンテカルロ法によって近似する,というブートストラップ法の2つの基本的な考え方に従って提案した。(1)の分布関数の近似については,パラメータの汎関数表現に対応した分布関数を構成した。つまり,目的のパラメータを汎関数表現し,それにプラグインすることによって最尤推定量が得られるような分布関数を構成した。これは,制約を考慮しない場合のブートストラップ法では経験分布関数を用いて自然にできることであるが,制約を考慮した場合にはこれまで対応されていなかった。(2)のモンテカルロ法による近似については,リサンプリングするときの標本の大きさを本来の標本の大きさと同じにするとパラメータの真値が境界(原点)にあるときに正しい分布に収束しないという問題を,m-out-of-nブートストラップ法を参考にして,リサンプリングする標本の大きさをある条件を満たすように本来の標本の大きさより小さくすれば解決できることを理論的に示した。 次に,最尤推定量のバイアスについては,リサンプリングするときの標本の大きさを本来の標本の大きさの半分程度にすればよいことをシミュレーションによって示した。ただし,リサンプリングするときの標本の大きさを半分にするということは,分布の収束が理論的に保証されないという問題を起こすことに注意する必要がある。 今後は,収束のオーダーを求めるとともに,より一般的な不等式制約の下での理論的考察に向けて研究を進める。
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