研究概要 |
研究計画に基づき、「培養組織片を用いた嗅球介在神経細胞の前駆細胞の遊走と分裂・分化等の時間・空間的関係の基礎的解析」を行った。 実験方法を改良しつつ、チロシン水酸化酵素(TH)のプロモーターにリポーター遺伝子として緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子を接続した遺伝子を導入した遺伝子改変動物(TH/GFP)マウスの嗅球-前脳の傍矢状断組織培養を生後早期の個体を用いて施行し、GFP陽性細胞(=THプロモーター活性化細胞)の移動を捉える目的で経時的な写真撮影を試みた。撮影後、標本を固定して免疫染色を行い、細胞の遊走や分化のマーカー蛋白質やcFosの発現の変化などと比較・検討した。培養片を脱分極させると嗅球糸球領域の細胞でリポーター(THプロモーター活性)とcFosの発現量が経時的・かつ特徴的に変化することを報告した。また、この動物の特性を生かして、ドパミン産生細胞前駆細胞が転写因子ER81とカルシウム・カルモジュリン依存性蛋白リン酸化酵素4型(CaMKIV)の発現とどのような関係にあるのかを固定標本で解析して報告した(Saino-Saito et al.,Journal of Comparative Neurology, in press)。その中で、ER81は限局した領域に存在するドパミン産生細胞前駆細胞に発現すること、一方CaMKIVが発現すると、細胞がドパミン産生細胞(の前駆細胞)に分化することが押さえられる可能性があることが示唆されたため、更なる解析を行うべく培養組織片での実験を実施中である。
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