研究概要 |
Six1,Six4は胚発生初期にプラコードに広く発現し、プラコードに共通したマスター因子である可能性が示唆されてきた。Six1を欠損したマウスでは、内耳、嗅上皮などに顕著な形成不全が報告されているが。同様に多くのプラコード由来の細胞により構成される脳神経節においては、詳細な機能解析が進んでいなかった。 本研究では脳神経節のうち三叉神経節に着目し、感覚神経細胞の分化、維持におけるSix1,Six4の機能とその分子機構の解明を試みた。脳神経節形成過程におけるSix1,Six4の詳細な発現解析はこれまでになされていない。当研究室で作成したSix1、Six4の欠損マウスではそれぞれの遺伝子をgfp及びbeta-galによって置換しているので、これを利用してSix1、Six4の発現の時期及び細胞特異性を解析した。その結果、神経節形成初期である10.5日胚において三叉神経節の感覚神経細胞においてGFPの発現が顕著に見られた。また、三叉神経節におけるGFPとbeta-Galの発現様式は細胞レベルで重複が見られ、Six1,Six4が同一の神経細胞に発現することが示唆された。 Six1,Six4二重欠損マウスでは野生型及びSix1、Six4それぞれ単独の欠損マウスと比較して神経細胞の数が少なく、アポトーシスの上昇が観察された。三叉神経節由来の神経細胞の初代培養系を確立することで、Six1,Six4二重欠損マウスで神経細胞に内在した異常が存在するか解析を行った。三叉神経節由来の神経細胞の初代培養を行った結果、二重欠損マウスから得た神経細胞は高濃度の神経栄養因子の存在下でも生存できずアポトーシスを起こすことが観察された。これらの結果から、Six1,Six4二重欠損マウス三叉神経節において、感覚神経細胞の内因性な異常によりアポトーシスが起こることが示唆された。
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