研究課題
若手研究(B)
小脳平行線維一プルキンエ細胞シナプスにおける長期抑圧現象(LTD)は、運動に関する学習・記憶の素過程と考えられ、その分子機構について精力的な解析がなされている。小脳LTD誘発の鍵を握る分子の1つとして、プルキンエ細胞に特異的に発現するδ2型グルタミン酸受容体(以下、δ2受容体と略す)があり、δ2受容体発現を欠く遺伝子欠損マウス(以下、δ2欠損マウスと略す)は、小脳失調や運動学習障害を示し、また小脳LTDを誘発させることができない。同時に、δ2欠損マウスにおける平行線維-プルキンエ細胞シナプスの数は、正常マウスに比べ、激減していることから、δ2受容体は、機能的なシナプス可塑性と形態的なシナプス形成・維持の2つの過程を制御するユニークな「記憶素子」として注目されている。しかしながら、δ2受容体の活性化機構についてはまったく明らかにされていない。そこで本研究では、δ2受容体の活性化機構を、トランスジェニックマウスと電気生理学・行動学的実験手法を有機的に組み合わせた新しいアプローチにより追究した。平成17年度に報告した、δ2受容体アミノ酸配列に保存された推定上のリガンド結合領域を潰した変異体の研究成果に引き続き、平成18年度には、δ2受容体を介したCa2+流入を抑制するように施した変異体をプルキンエ細胞特異的に発現させた"レスキューマウス"の作製および解析を終了させた。このマウスは、δ2欠損マウスにみられる小脳失調、小脳LTD欠如およびシナプス機能異常など、すべての病的表現型を回復させた。従って、脳内で機能するδ2受容体は、δ2受容体を介したCa2+流入を必要としないことが示唆された。尚、上記成果は、2007年3月に、Journal of Physiology(London)誌に掲載された。また、平行線維-プルキンエ細胞シナプスの機能について、いくつかの新しい知見を得ており、European Journal of Neuroscience誌、Journal of Neuroscience誌、Brain Research誌等に、その結果を報告した。
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