研究概要 |
リソソーム膜蛋白LAMP-2の原発性欠損症であるDanon病は、筋鞘膜の性質を有する膜で囲まれた特異な自己貪食空胞の存在が特徴である。近年同様の空胞を有する疾患が複数存在することが明らかになり、われわれはこの一連の筋疾患群を「自己食食空胞性ミオパチー(AVM)」と呼び疾患概念の確立と分子病態の解明を目指した。昨年度は、特異な空胞の形成機序解明を目指しAVM患者筋の病理学的解析を行った。空胞壁はAChEを発現し完全な筋鞘膜の性質を有しており、他疾患では全く認めない極めて高い疾患特異性を示した。電顕解析から自己貪食空胞はその周囲に二次的に形質膜が生じて形成されたものと考えられた(Sugie K, et al. 2005)。さらに、先天性自己貪食空胞性ミオパチーの1家系を見出し、AVMの新たな疾患単位と考え臨床病理学的特徴について報告した(Yan C, Tanaka M, Sugie K, et al. 2005)。 本年度は、AVMの疾患概念をさらに確固たるものにするため、予後を左右する心筋症について検討した。Danon病では発症年齢の早い男性では肥大型心筋症を、発症の遅い女性では拡張型を示した。またWPW症候群が高頻度にみられ、ペースメーカ例・心臓移植例を認めた。剖検心筋組織ではLAMP-2欠損マウスの心筋同様に自己貪食空胞を認めた(Sugie K, et al. 2006)。心筋症で発症する例もあり特徴を明らかにすることは有意義である。多臓器障害を有するAVM・乳児型AVM・先天性AVMでも肥大型心筋症を示した。一方、この3病型と共通する肥厚した筋鞘膜所見を示す過剰な自己貪食を有するX連鎖性ミオパチーでは心筋障害は認めず、心筋障害については異なる発症メカニズムが示唆された(Sugie K, et al. 2006)。 さらに、AVMの筋病理学的検討で、複数のリソソーム蛋白の発現を強く認めており、オートファジー機構の亢進が推測される一方、ユビキチン・プロテアソーム系の有意な発現は認めなかった。現在さらに詳細に検討中で、今後、リソソーム系機能の解明および自己貪食カスケードの解明を行っていく。
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