研究課題
若手研究(B)
中枢ミエリン特異的タンパクであるオパリンは、ループ膜に限局して存在する新規膜貫通型糖タンパクである。既知タンパクとの相同性はない哺乳類特異的タンパクである。本年度は、生体内での機能を解析するため、オパリンノックアウトマウスを作製した。相同組み換え技術によって、マウスES細胞株E14のオパリン全コーディング領域をネオマイシン耐性遺伝子に置換した組み換えES細胞株を樹立し、B6系統マウスに戻すことによって、オパリンノックアウト(KO)マウスを作製した。野生体(WT)、ヘテロ体、KO体の出生児数は1:2:1であった。KOマウスは6か月齢までは、失調等の異常は見られなかった。運動機能、音に対する驚愕反射、尾つり上げテストについても、WTと差は見られなかった。KO個体同士の交配可能であった。脳湿重量、単位脳湿重量から回収されるミエリンタンパク量に差は見られなかった。3週、9週、27週齢マウスについて、ミエリン構成タンパクの発現量を比較した。KOマウスでは、オパリンタンパクの発現は全く見られなかった。中枢ミエリンの主要な構成タンパクであるMBPとPLPは、野生体とKO体で差は見られなかった。ノンコンパクトミエリンに特異的に発現するMAG(Myelin associated glycoprotein)とClaudin-11の発現にも差は見られなかった。抗Caspr抗体と抗Pan-Na+channel抗体を用いた免疫蛍光染色で、中枢有髄線維のランビエノードの形成を観察したが、KOマウスにおいても正常なノード形成が見られた。電子顕微鏡で、視神経軸索のミエリンの微細構造を比較したが、ミエリンの厚さ、周期線の間隔、パラノード部位の形態に差は見られなかった。KOマウスに重篤な神経症状やミエリンの構造異常が認められないこと、オパリンは脳の高次機能に関わっていることが期待される。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Cell Calcium 39
ページ: 313-324