研究課題
若手研究(B)
分泌性タンパク質プレセレベリンは、腫瘍壊死因子(TNFα)やアディポネクチンと同じC1qファミリーに属する新しいタイプの神経栄養因子である。小脳穎粒細胞において産出、分泌され、ターゲットであるプルキンエ細胞に作用し、穎粒細胞軸索(平行線維)-プルキンエ細胞におけるシナプスの形成・維持とともに、成熟シナプスにおいて機能的可塑性を制御する分子であることが分かってきた。プレセレベリンのプルキンエ細胞における受容システムを解明し、そのシグナル伝達経路を解明することが本研究の目的である。我々は培養細胞を用いた発現系から調整、粗精製したプレセレベリンが、培養プルキンエ細胞や短期培養小脳スライス標本において、プルキンエ細胞樹状突起上に存在する神経棘に選択的に結合することを明らかにした。この実験事実はプレセレベリンそのものがリガンドであること、プレセレベリン受容体がプルキンエ細胞神経棘上に特異的に局在することをはっきり示している。また、成熟小脳から調製したシナプトソーム分画、およびPSD分画にプレセレベリン分子と強い結合を示す、受容体タンパク質の存在を示唆する結果も得ることができた。またプレセレベリンは6量体を形成していること、この6量体構造はアミノ末端側に存在する2つのシステイン残基に依存しており、このシステイン残基変異体は3量体であって6量体を形成せず、プルキンエ細胞への結合能、及びシナプトソーム分画への結合能を欠如することを見出した。これらの知見を2006年度日本神経科学会にて発表した。一方、プレセレベリン欠損マウスから調整した培養プルキンエ細胞では、in vivoでの結果と同様に平行線維シナプスの低形成が異常所見として観察され、プレセレベリン投与後約24時間でシナプス低形成が回復することを発見した。すなわちプレセレベリンがシナプス形成を外的に制御できる新しい分子であることを示唆できた。
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Journal of Biological Chemistry 281
ページ: 25577-25587
ページ: 17501-17509
European Journal of Neuroscience 24
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Journal of Biological Chemistry (発表予定)