研究概要 |
本年度は、昨年度に作製したCMV/βactin promoterによってプロラクチンを発現する雄トランスジェニックマウス(CW/βactin-rPRLマウス)から、体外受精(IVF)および胚移植(ET)によって作製されたF1マウスでのライン選別および変異プリオンマウス(h129M-Tgマウス)との複合化を行い、ヒトおよび自然環境への生物災害をもたらす可能性のある遺伝子改変マウスの繁殖阻止シミュレーション実験を行い、外界での繁殖阻止のための媒体にCHV/βactin-rPRLマウスが有効であることを示した。当初、ポリオウィルスレセプターを有するPVR/IQIマウスを用いる予定であったが、PVR/IQIマウスの民間企業への移管により、h129M-Tgマウスの使用に変更した。 DNAインジェクションによって作製されたCMV/βactin-rPRLファウンダーマウスは雄が1匹、雌が12匹得られたが、雌は性行動を行わず雄を全く受け入れなかったため、F1の作製ができなかった。雄CMV/βactin-rPRLマウスでも、自然交配では次世代が得られず、IVF-ETにてF1を作製することが出来た。 CMV/βactin-rPRLマウスのF1では、ファウンダーからのトランスジーンの伝達により、rPRL発現の低い個体が見られたため、トランスジーンによるrPRLをELISAにより測定し、rPRL濃度が高く(400ng/ml)、不妊を呈した個体を選抜した。選抜された雄CMV/βactin-rPRLマウスはファウンダーと同様に自然交配させても、雌を妊孕させるには至らなかった。 次に、生物災害をもたらす可能性のある遺伝子改変マウスの繁殖阻止シミュレーション実験のため、雄CMV/βactin-rPRLマウスと雌h129M-TgマウスをIVF-ETにより複合化し、rPRL-Tg(Tg/+),h129M-Tg(Tg/+)マウスに繁殖不全の確認を行った。対照にはrPRL-Tg(+/+),h129M-Tg(Tg/+)マウスを用いた。その結果、対照であるrPRL-Tg(+/+),h129M-Tg(Tg/+)マウスでは、雄は6ペア中5匹の雌を妊孕させた。rPRL-Tg(+/+),h129M-Tg(Tg/+)マウスは、6匹全ての個体が妊娠に至った。それに対してrPRL-Tg(Tg/+),h129M-Tg(Tg/+)マウスは雌雄共に妊孕および妊娠に至った個体はいなかった。 以上、ファウンダー、F1およびrPRL-Tg(Tg/+),h129M-Tg(Tg/+)マウス、3世代の結果から、生物災害をもたらす可能性のある遺伝子改変マウスの外界での繁殖阻止のための媒体にCMV/βactin-rPRLマウスが有効であることが示された。
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