研究概要 |
申請者が作出した,グルコキナーゼ遺伝子(Gck)変異マウス12系統はすべての系統において,ヘテロ変異体では緩やかな高血糖を呈する.本研究課題において,変異を有する系統のヘテロ変異個体同士を交配することにより,3種類のコンパウンドヘテロGck変異マウスを作出した.同じ点突然変異系統同士の交配によりホモ変異個体を作出した.その結果,ヘテロ変異では比較的穏やかな糖尿病を発症する個体もホモ変異ならびにコンパウンドヘテロ変異となると重症化するということ,さらにそのなかでも生存率や,血糖値などにおいて差が見受けられたことから,変異の箇所や変異によって生じる遺伝子産物の違い(ミスセンス変異あるいはナンセンス変異の違い)により,機能発現に差異が生じることが明らかとなった.これらの結果は第19回International Mouse Genome Conferenceならびに第28回日本分子生物学会で発表された. また,ヒト2型糖尿病に類似した肥満,高インスリン血症,インスリン抵抗性の表現型を示す変異マウス系統に関して,変異遺伝子同定のfine mappingを実施し,現在ゲノム上約3Mb領域に絞り込まれ,領域内の遺伝指数は12に絞り込まれた. 新たな変異マウスの検出を目的とし,高脂肪食負荷をかけたENIJ変異誘発個体に生化学検査を実施した.高血糖変異系統として検出された2系統は11週齢の若齢では正常,高脂肪食負荷後の18週齢では高血糖を発症したが,遺伝性が不明瞭となった.遺伝的背景の影響を考慮し,表現型が検出できる交配相手系統の検討のためにC3H,DBA/2J系統と交配したが表現型は検出できなかった.
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