研究課題
若手研究(B)
本研究ではまず培養血管内皮細胞から抽出したストレスファイバ(以下SF)の力学特性を計測した。続いてSFに影響を及ぼす物質として(i)SFの収縮を引き起こすATP、(ii)SFの発達を促すリゾホスファチジン酸、(iii)収縮を促進するヒスタミン、(iv)SFの主成分アクチンの脱重合を起こすサイトカラシンD、(v)収縮を抑えるイソプロテレノールをそれぞれ投与した際のSF内張力変化を調べた。SFの力学試験では、細胞に低イオン強度溶液と界面活性剤を用いた処理により細胞質を除去し、細胞外基質に物理的に結合したSFを抽出した。SFを細胞外基質から剥がして無応力状態にすると、収縮促進物質が存在しない条件においてもSFが縮む様子が確認された。このことからSFには元々、恐らくアクトミオシン活性に由来する引張ひずみが存在していることが示唆された。そこで無応力状態からSFの両端を物理的に把持して伸張し、元の長さまで戻すために必要な引張力を計測したところ平均10nN程度の値が得られた。これは過去に報告されている細胞接着斑における細胞の接着吸引力と力のオーダが等しい。従って細胞の接着吸引には、定量的に考えて、SFが支配的な力学的役割を果たしていることが考えられた。続いて、微細加工技術により作製したPDMS製複数突起上に細胞を培養し、SFを化学抽出して上記(i)から(v)の物質がSFの張力に及ぼす影響を調べた。ATPを加えた直後に上記突起がSFの長軸に沿ってたわみ、つまりSFの収縮力が増大されたことが確認された。突起のたわみに対するバネ定数を計測してSFの収縮力変化を調べたところ平均20%の収縮力上昇が得られた。他の試薬についても調査を行い、無処理の細胞に同じ物質を加えた時の変化と比較した。これらの実験からSFが上記化学物質に対して定量的にどの程度、機械的信号である張力を変化させるかが調べられた。
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