研究概要 |
平成19年度は,神経細胞を液晶膜上で培養し,神経細胞の活動電位発生に伴う電位分布の変化を光学的に観測することを主な目的とした.また同時に,ネマチック液晶以外の強誘電性液晶やコレステリック液晶の電気光学応答特性についても調べ,最適な液晶材料を見出すことも目的とした。 平成19年度の実施では,残念ながら神経細胞の活動電位発生に伴う電位分布の変化を光学的に観測する実験を行うには至らなかったが,線維芽細胞や筋芽細胞の培養には成功した.また,ネマチック液晶以外の強誘電性液晶を使った実験を行い,強誘電性液晶上ではネマチック液晶上とは違い,細胞を培養することが困難であることがわかった.しかしながら,強誘電性液晶に毒性があることは否定出来る結果が得られており,細胞の足場が問題である可能性あることが明らかとなった.この結果から,強誘電性液晶が持つ他の優れた特性を考慮すると,強誘電性液晶は有効な材料であると言える. 実施計画では,毎秒1000コマの撮影が可能な高速度カメラを用いて細胞外の電位分布の変化を最速1msごとに記録する予定であったが,まだ細胞外電位分布の観測には至っておらず,水中液晶に金属電極で電圧を印加した際の電気光学応答特性を詳細に調べるという基礎データを得るにとどまった.従来から使われているマイクロ電極を細胞に刺入する方法での膜電位観測技術を利用して細胞の膜電位を観測するという計画は,筋芽細胞の培養過程での膜電位の変化を詳細に調べ筋細胞の活動電位の測定にも成功し,計画通り実行出来た. 神経細胞は,線維芽細胞や筋芽細胞と比較して培養も膜電位の観測もより高度な技術を必要とし,しかも高価であるため,線維芽や筋芽細胞で実験の基礎を確立する必要があり,平成19年度内では,神経細胞には至らなかったものの,着実に研究が進められたといえる.
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