研究概要 |
本年度は,前年度に続いて,人体の解剖学的構造をさらに細かく認識できるように処理手順の開発を進めた。具体的には,人体の骨格と骨格筋の分類手順の開発,およびこれらの性能評価を試みた。まず,本研究はこれまでに認識が困難となっていた腹壁周辺の筋肉(腹直筋,腹斜筋,大腰筋,腰方形筋)の自動認識手順を開発した。そして,開発手順を40歳から80歳の患者17例に適用した結果,12例から良好な認識結果(専門医による手入力との平均一致率は約77%)が得られた。この結果から,これまでに手動で行っていた大腰筋と腹斜筋の筋厚測定は,本手法によって誤差3mm以内で自動的に測定可能であることが示された。また,以上の手法に横隔膜の自動抽出および骨格領域の自動分類手順を加えて,腹腔の組織(骨格,腹筋,内臓脂肪,皮下脂肪)の量を総合的に分析することを実現した。さらに,異常を判断するために,正常人体のばらつきを把握する必要があるため,本研究では136例のCT画像から人体の脊柱における骨密度の正常分布を調査した。その結果,骨密度の異常低下の判断基準として利用できる可能性が示された。CT画像から骨密度,内臓脂肪量,および筋肉量の自動的な測定と,正常分布の把握が完全に実現できれば,骨粗鬆症,メタボリック,シンドローム,運動機能の低下を事前に予測することが可能となり,予防医療に貢献できると考える。 今年度は,体幹部における人体の組織・臓器の存在位置を確率的に表す"人体の電子地図"の作成と,その性能評価も進めた,具体的には,単純CT画像上に人間の目でも認識が困難となる肝臓血管のアトラスを構築し,肝臓血管の中で重要となる中肝静脈の自動抽出に応用した。22症例のCT画像に適用して,中肝静脈の自動抽出が一定の精度で実現できた。それ以外には,人体の気管支構造の形状情報の調査も行い,その結果に基づいて,気管支における"電子地図"の作成も行った。
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