研究概要 |
本研究では,外径100μmおよび内径50μmを有するマイクロ針から0.5μlのヒト血液が吸引可能な携帯型血液採取法マイクロポンプ,および血中の血糖値測定用センサの開発を目的とし,以下の3テーマについて研究を行った. (1)汎用有限要素法ソフトを用いて,マイクロポンプの構成要素であるSMAの形状4因子,SMAの機械特性4因子,液体密封用ゴムの機械特性3因子,針の内径変化に伴う圧力損失の合計12因子を変化させ,SMAアクチュエータの形状回復によるタンク内の体積の変化について実験計画法を用いて評価を行い,最良なマイクロアクチュエータ設計条件の探索を行った. (2)血糖値測定器の小型化を目指すため,2電極による測定法の実現,測定誤差率を現在利用されている測定器の半分である5%前後に改善,患者への負担軽減のため,極微量の血液において,正確な測定を行うために測定分解能の向上についての検討を行った. (3)針内径の拡大によるポンプ出力の低減と痛みはトレードオフの関係になるが,痛みに対する許容最大外径を求めると同時に,穿刺に耐え得る剛性を有し,かつ圧力損失が小さくなる条件を満足する針を設計するために,蚊の針と同程度の径を基準とし,生体適合性を有するチタン製マイクロ針創製を目的とし,針の内形状・外形状を含む,断面の形状変化による流体の損失および剛性を調べ,最適な形状を検討した. その結果,以下の知見を得た. (1)貫通溝幅,切り代の長さ,SMAの直径およびSMAの厚さに関して99%で有意性を示し,特にSMAの厚さは,30.42%の高い寄与率を示した. (2)過酸化水素の還元作用を用いることにより,小型化が可能となる2電極法を用いることで,測定誤差率5%が実現可能となった.また,カソード側の電極の表面積を広くすることにより,単位時間当たりの過酸化水素分解量が増し,過酸化水素濃度の測定分解能が向上することを示した. (3)針の外側,内側の形状を正n角形にした場合,n≦8において穿刺に必要な断面二次モーメントを得た.また,針内部の形状を正n角形にした場合,n≧6においてSMAにより生成される負圧より圧力損失が小さくなり吸引可能となった.さらには数匹のマウスに外径の異なる針を穿刺し,数分の経過後の唾液アミラーゼの上昇によるストレスの変化,痛みによる慣れを確認したことよりアミラーゼの検出は痛みの評価が可能であることを示唆した.
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