研究概要 |
はじめに:Silent aspirationを否定し、安全に摂食を行うためには、咽頭感覚と反射的咳嗽力の定量的評価が必要である。今回咽頭感覚と随意的および反射的咳嗽力について、嚥下障害を有しない高齢者と嚥下障害患者で測定し、比較を行った。 対象と方法:嚥下障害を有さない高齢者30名(以下、高齢者群)および嚥下障害患者(以下、患者群)18名を対象とした。高齢者群の平均年齢73.2±2.2歳であった。患者群の平均年齢は、73.11±11.7歳であった。ネブライザーは、REF8900を使用した。まず、随意的咳嗽のpeak cough flow(PCF)を測定した。2%,5%,10%,15%,20%,30%のクエン酸溶液を準備し、1から6の番号を記載したネブライザーチャンバーに、クエン酸濃度と無関係にランダムに入れた。また1から6の番号の記載した紙を用意して、番号が見えないようにし、被験者に順番に引いてもらい、引いた番号順でクエン酸溶液の吸入を施行した。5回咳嗽を生じた時点で終了とし、PCFを測定した。咳嗽を生じない場合は、30秒吸入を行なった時点で終了とした。 結果:高齢者群の随意的咳嗽のPCFは、246.8±86.4L/minであり、患者群100±85L/minであった。有意に患者群のPCFは、小さかった。クエン酸溶液10%以上では、高齢者群では1名を除き29名で咳嗽が誘発され、患者群では2名を除き16名で咳嗽が誘発された。患者群の咳嗽が誘発されなかった2名は、嚥下造影検査にてsilent aspirationを認めた。クエン酸溶液10%以上で咳嗽を誘発された高齢者群と患者群のPCFは、全ての濃度で有意差を認めなかった。 考察:クエン酸溶液ネブライザーを用いて、咽頭感覚と咳嗽力を測定することで、誤嚥性肺炎を生じる危険性のある患者を検出出来る可能性が示唆された。
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