研究概要 |
【目的】運動強度(筋出力および関節運動可動範囲)の違いが運動関連脳磁場(MRCF)に及ぼす影響を検討する. 【対象および方法】対象は予め同意の得られた健常男性8名であった.MRCFの計測には,306チャネル全頭型脳磁界計測装置(Neuromag)を使用し,1)抵抗なし示指伸展運動,2)抵抗あり示指伸展運動,3)抵抗なしで関節運動範囲が少ない示指伸展運動の3種類を動作課題として,MRCFおよび示指伸筋の筋電図を記録した. 【結果および考察】3条件の示指伸展運動時において8名の被験者全てにおいてMRCF波形を明確に観察することができた.筋活動の増大に伴い,運動磁場(MF)の振幅および電流発生源算出時における電流強度が大きくなった.また,関節運動の少ない課題においては運動誘発磁場第一成分(MEF I)の振幅および電流強度が小さくなった.運動開始からMEF Iピークまでの潜時は,抵抗なしに比べて抵抗運動時では有意に短縮したが,筋活動開始からMEF Iまでの潜時には両者で差が認められなかった.各波形ピーク時における電流発生源を解析すると,MFピーク時における電流発生源は大脳一次運動野に位置しており,MEF Iにおける電流発生源は一次感覚野の3b野である可能性が高いと考えられた. これらのことから,MFは一次運動野の活動を反映しており,筋収縮強度を反映して振幅が大きくなることと,MEF Iは関節運動ではなく,筋収縮を感知した運動感覚を反映しており,筋収縮が弱い場合には振幅および電流強度が小さくなることが明らかになった.さらに,ある程度の筋収縮強度に達するとMEF Iの振幅は増加しないものと考えられた.
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