研究概要 |
本研究ではロービジョンの見え方の推定や日常生活行動の予測を行うための視機能検査として活用されているコントラスト感度特性(CSF)について,数字を視標として用いた新しいCSF測定法の開発を目的としている。平成19年度では,日常生活で見る実物の印刷サイズと輝度コントラストについて実測を行い,本研究で開発したコントラスト感度測定法で得られるデータとの関連について検討を行った。実測は,日常生活でよく目にする数字が印刷あるいは表示されている物(値札,体温計,切手,通帳,新聞,雑誌等)671種類を対象とした。文字サイズの測定はスケールルーペを用いて文字高をミリ単位で計測し,輝度コントラストは色彩輝度計を用いて計測した輝度からウェーバーコントラストの式に基づいて算出した。文字サイズ計測の結果,0.9〜36mmの範囲であり2.0〜3.0mmの大きさに集中していることがわかった。一方,輝度コントラストは0.9〜98.75%の広範囲にわたっており,9割は40%以上であることがわかった。コントラストが低い例には,銀行窓口用紙や硬貨など日常生活で重要な物が該当した。平成17年度と18年度の研究から視覚正常者の場合,数字の読み取りに必要なコントラストは約1.25%であることがわかっており,視覚正常者で数字の読み取りに困難が起こらない事実を裏付けている。今後,ロービジョン患者を対象としたときに本研究で得られた実物の輝度コントラストに関する基礎資料を基にすると,数字を視標としたコントラスト感度測定法で測定されるデータから,患者がどのような物が見えず日常生活でどのような困難が生じるか具体的な予測が可能になると考えられる。
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