研究概要 |
パソコン画面の要求値に筋力発揮値を合わせる形式の筋力発揮調整能測定装置を用いて,1.下肢の筋力発揮調整能を測定するテスト方法を検討し(妥当性,信頼性等),2.筋力発揮調整能測定値の上肢・下肢間の関係および差異および3.視覚、固有受容系が筋力発揮調整能にいかなる影響の検討等を行った。以下のような知見が得られた。 1.(1)等速性筋力発揮値と本測定装置による座位脚伸展動作(等尺性および等張性運動)での最大筋力および一定負荷のもとでの下肢の筋力発揮調整能(発揮パワー)との関係を検討し,前者の関係は高く,後者の関係はやや低かった。(2)評価変数として,最大関節可動域に対する相対値を目標値とし,その目標値と実際の等張性運動による膝伸展角度との誤差を利用した。評価変数の試行間信頼性は高かった。以上より,力の応答が視覚的に補助されるこれらのテストは下肢の筋力発揮調整能を客観的に捉えうる有効なテストであると推測された。2.(1)疑似ランダム波形表示法による健常成人男性の上肢の筋力発揮調整能は40歳代以降低下を示し,年齢段階別および40歳代を境界として標準値を作成することが適当である。(2)疑似ランダム波形表示法による健常成人女性の上肢の筋力発揮調整能は50歳代以降低下を示し,年齢段階別および50歳代を境界として標準値を作成することが適当である.(3)棒グラフ表示法による健常成人の上肢の筋力発揮調整能は性差がなく,加齢に伴い段階的に低下するが,40歳以降低下が著しくなる。また,加齢に伴う個人差の変動は男女でほぼ同程度である。(4)筋力発揮調整能は上肢・下肢共に利き側のみが安定した測定値が得られる。3.筋力発揮調整能は上肢・下肢共に視覚情報を与える場合の方が与えない場合よりも測定値に優れる。
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