研究概要 |
本研究では,バスケットボールの公式試合中における各選手とボールの移動距離と移動速度を明らかにし,体力的トレーニングの効果的なコーチング資料を提供すること,攻撃と防御の相対的な関係を考慮した集団戦術における空間を数値化し,その数値を用いて代表的なプレーにおける空間の利用法にろいて説明することを試みるこ乏を目的とした.これらの課題に取り組むことで,集団戦術における客観的な分析を可能な手法を開発することを本研究の自的とした. 本研究では,DLT法を用いた三次元画像解析手法により,まず全選手とボールの移動距離・移動速度が算出された.その主な結果は次の通りである.1)選手の移動距離の平均と標準偏差は5600±243m及び5552±176mであり,ボールは10712mであった.次に,選手の移動速度の平均と標準偏差は1.68±1.25m/s及び1.66±1.23m/sであり,最高移動速度の平均と標準偏差は7.29±0.26m/s及び7.51±0.23m/sであった.一方,ボールについでは,移動速度の平均と標準偏差は3.20±2.47m/s,最高移動速度は15.52m/sであった.そして,選手は試合中のほとんど(約70%)を2m/s以下のジョギング程度で移動しており,最高移動速度に近い6m/s以上で移動している時間は約0.2分程度であった. 加えて,画像解析手法で算出された三次元位置座標データをもとに木島(2003)の勢力分布モテルを応用することで,攻撃や防御の相対的な勢力を算出することが可能とことを明らかにした.また,算出された勢力を等高線図で表すことで,有効な空間の存在をこれまでのビデオ映像よりも視覚的に理解しやすい形で表現した.そして,エリア別に選手の相対的な勢力を算出することで,一つのプレーにおける空間利用の有効性を数値で判断することが可能となった.
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