研究概要 |
<目的> 幼児の唾液中に含まれる神経内分泌ホルモン(コルチゾール)及び免疫関連物質(分泌型グロブリンs-IgA)が,生活スタイルの差異によりどのように変容するかを実証的に検討することを狙いとする。 <方法> 対象は、兵庫県宝塚市立幼稚園児119名であり、調査はH18年2月22日〜28日の1週間実施した。調査内容は、(1)生理的データ(体温・活動量の変動把握:5点/1日,唾液採取:3点/1日,2日間測定)、(2)子どもの生活記録(生活リズム及び健康状況等)、(3)アンケート(保護者用質問紙,幼稚園教諭用質問紙)を実施した。 <主な結果> 1.幼児の唾液中コルチゾール及びs-IgA値を、9:00(A)・12:00(B)・18:00(C)の3点で計測した結果、コルチゾール値はAを頂値として下降していく日内変動が(F(2.228)=36.39,p<-001,Bonferroni:A>B,C)、s-IgA値はAを底値として上昇していく日内変動が確認された(P(2.228)=29.09,p<.001,Bonferroni:A<B,C) 2.幼児の唾液中コルチゾール及びs-IgA値の日内変動の振幅(頂値と底値の差)は、平日平均起床時刻と有意に相互関連し(コルチゾール:r=-.28,p<-.001、s-IgA:r=-.29,p<.001)、平日平均就寝時刻については、両指標とも有意傾向が確認された。 3.幼児の唾液中コルチゾール及びs-IgAの各測定値及び日内変動振幅と、体温及び身体活動量との相互関連を検討したが、いずれも有意差は確認されなかった。 4.結果2を踏まえ、平日平均起床時刻と就寝時刻の各平均値を基準にして操作的に4群に分類し、「早起早寝群」と「遅起遅寝群」を抽出して、コルチゾール及びs-IgA測定値及び日内変動の振幅の差異を検討した。その結果、「早起早寝群」はコルチゾール値において、Aと日内変動の振幅が有意に大きかった(A:t(74)=3.6,p<.001、振幅:t(74)=3.0,p<.01)。一方、s-IgA値においては、Aと日内変動の振幅に有意差が認められ、「早起早寝群」はAの測定値が有意に低く(t(75)=2.2,p<.01)、振幅が有意に大きかった(`(74)=2.0,p<.05)。
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