研究概要 |
色彩に面積効果があることは従来よく知られているが,同様に質感や素材感にも面積効果があることが実務者から度々指摘されている。本研究は,質感に面積効果があるとの仮説をもとに,その傾向を定量的に把握・整理することを目的とした。 まず,単純なテクスチャーを用いて粗さ感の面積効果を把握するため,試料の粗さの程度と色彩を制御したテクスチャーの作成を試み,粗さを段階的に変化させた試料を作成することに成功した。これらと建材試料を用い,試料の大きさ,粗さ,背景の粗さ等を変数として質感を主観評価させた。実験は,3520×3520mの実験室内の壁面1面に評価試料および背景試料を鉛直に呈示し,正面から視点を固定した被験者に観察させた。視距離は2000mm,照明は天井からの全般照明で,試料面中央鉛直面照度を約6501xとした。評価試料は番手を変えることで粗さが段階的に異なるようにした。使用した糸は直径約1.2〜7.0mmで台紙に隙間なく横方向に張り,36×36mmから2160×2160mmの範囲で面積を変えて提示し評価させた。背景は事前に行った無彩色平滑紙に加え,評価試料と同一色彩で凹凸の程度の異なる5種類の布を用いて影響を検討した。評定にはME法を用い,基準試料を10とした場合の評価試料の質感を感覚に比例する正の数で答えさせた。被験者は正常視力を有する学生5名とし,各被験者について3回の試行を行った。 実験の結果,単純なテクスチャー試料と建材試料は類似した傾向が認められ,試料が粗い場合には面積が大きくなると粗さ感が粗くなるのに対し,試料が細かい場合には背景の影響を受け粗さ感が変動することがわかった。さらに,評価試料と背景試料の粗さの正逆により質感評価が異なる可能性が示唆された。
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