研究概要 |
昨年度までの研究で大豆難消化性タンパク質(SRP)をペクチンと同時に投与することで大腸内容物中の炭素(C)/窒素(N)比を変えた場合,短鎖脂肪酸生成(特に酪酸生成)が亢進することを明らかにした。今年度の研究では,大腸に流入するC/N比を変動させたときの大腸発酵パタンの変動に対し,大腸内細菌叢のパタン変動が関与している可能性を検証した。そのためにSRPの投与量を変動させたときの大腸発酵の変動と大腸内細菌叢パタンの変動を調べた。また,これらの変動に伴う大腸粘膜組織に与える影響を検討した。 コントロール食,5%ペクチン(PE)食,PE+2。5%SRP(PE+SRP)食をラットに与え,大腸内細菌叢,大腸発酵,大腸粘膜に対する作用を調べた。これまで同様,PE食を与えたラットに比べ,PE+SRP食を与えたラットで盲腸内短鎖脂肪酸濃度は増加し,特に酪酸及びプロピオン酸濃度は有意に増加した。16SrRNA遺伝子のPCR-DGGE解析より,コントロール食ラットに比べ大腸内細菌叢パタンはPE食ラットで異なる細菌叢パタンを示したが,PE+SRP食ラットでさらに新たな細菌叢パタンの形成はみられなかった。しかし,PE+SRP食ラットでのみClostridium methylpentosum sp.が検出された。Clostridium methylpentosumはペクチンに結合しているラムノースを資化し,プロピオン酸を生成することが知られている。大腸粘膜増殖能はPE+SRP食ラットでコントロール食ラットよりも亢進している傾向がみられた。以上より,ペクチンと同時にSRPを投与することで,Clostridium methylpentosum sp。の増殖が促進し,酪酸及びプロピオン酸優勢の大腸発酵パタンを形成することが明らかとなった。また,これに伴い大腸粘膜の増殖を促進することが示唆された。
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