研究概要 |
放送大学やNHKのテレビを利用した遠隔授業やインターネットによる遠隔教育が実用化し定着している.この方法では伝送画像が平面画像であり立体画像の効果が十分反映しにくいことや,有機化学分野のように立体分子模型を利用する授業では,現行方式では受講者に分子構造などが伝わりにくいという問題もある.このような問題を解決するためには,平面画とは違い,モノの特徴がしっかり伝わる立体画像伝送が有効であると考えられる.この意味で,物体の持つ波面情報を2次元の干渉縞として記録・再生可能なホログラフィを活用した伝送方式が可能となれば大きな効果が期待できる.携帯情報端末には無線LANやBluetooth等が搭載され,Mpeg4形式の動画像データの利用が積極的に行われるようになってきている.この意味では,PCネットワークに形態情報端末を巻き込み,立体動画像を遣り取りする土壌が整ってきたといえる.本研究では帯情報端末と立体画像を組み合わせた教育システムへ適用するシステムの開発を目的としている.携帯可能で小型な3Dテレビ伝送システムを開発することを最終目的としている.その中で,本課題では立体動画像を伝送するためのシステムを構築し,伝送画像の画質検討を行うことを目的としている.立体動画像の伝送技術が確立すれば,立体画像を用いた遠隔教育システムへ応用可能となると考えられる.ホログラフィの原理的な「三次元物体を平面画像に圧縮できる」という特長を活かし,視差画像方式のような煩雑な手法ではなく,より単純かつ現実的で遠隔教育に応用可能な立体動画像伝送システムの構築が求められている. 上述の目標を達成するためにはディジタル・アナログ,有線・無線を問わず,立体動画像伝送を行うための方式を検討することが極めて重要であると考えられる.立体画像伝送を行うためのインフラとしては,インターネットや無線LAN, Bluetooth, IRなど既存のインフラを用いた方法が考えられるが,既存のインフラを有効利用するという研究例は歩トンフォ行われていなかった.そこで,本課題では以下の点について研究を実施した.(1)有線LANをインフラとして用い,Mpeg4圧縮による動画ホログラムの伝送法について,伝送されたホログラムから滑らかで高コントラストな立体像再生が可能となることを実証すると共に,理論的な検討を加え,これをOptical En
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gineering誌に論文発表した.他の研究者からの反響がかなり大きく,国際会議IDW'06で招待講演も行った.(2)動画,静止画の両方に適用可能なJPEG2000形式でのホログラム圧縮について理論的かつ実験的な検討を行い,得られた成果を画像電子学会誌に論文発表した.この方法では,従来のDCT法に基づくJPEG圧縮法に比べて,圧縮率が高い上にホログラムのデータ損失が少ないことが明らかとなり,ホログラムデータの圧縮法として極めて有効であることが明らかとなった.これは,ホログラムデータを伝送ノイズの影響が小さいディジタルデータとして伝送可能な,ディジタルSSTV方式(狭帯域音声通信)でも採用されているものであるため,今後の遠隔教育システムへの応用が大いに期待できるものである.(3)複雑な実物体によるホログラムを伝送する目的で,既存の各種圧縮方式によりホログラムの品質劣化を理論的かつ実験的に検討した.これに併せて,実在物体をもとにホログラムを作成するための光学系を構築した.(4)前述のMPEG4圧縮を用いた立体動画像伝送法にステレオ音声を付加して,立体映像音響コンテンツの配信に向けたプロトタイプシステムを構築し,伝送特性(ホログラム,音声)を検討した.その結果,同手法が遠隔授業等に十分に利用できる可能性を見出した.得られた成果を電子情報通信学会論文誌に論文発表した.(5)アマチュア無線を用いたSSTV方式でのホログラム伝送の高速化を目的として高速FMモードによる立体画像の無線伝送法を検討した.得られた成果を画像電子学会誌に論文発表した.(6)無線LANの使用が許可された航空高専本館7Fにて,インターネットから遮断した環境でMPEG4圧縮による動画ホログラムデータの伝送実験を試み,滑らかな立体動画像の伝送に可能性を見出した.本方式は従来提案した有線LANによるイントラネットを利用した動画像伝送と比べて,伝送速度,画質の点で劣ることなく今後の研究の発展にも大きな期待ができる.今後は実験で得られたデータを解析し,理論的な検討を加え成果を国内外の学会に提案していく予定である.受信したホログラムの表示を行うためのシステムとして,ホログラフィ立体像投影装置の画質改善を行った.得られた成果を国内外の学会へ発表すると共に,画像電子学会誌に論文発表した.(7)立体画像を提示したときに,ヒトが立体画像をどのように認識するかについてアンケートを用いた統計処理を行い予備検討とした.これは,遠隔教育へ立体画像伝送システムを適用する上で必要なデータとして期待される.得られた成果を航空高専研究紀要に論文発表した.(8)電波の使用ができない環境(病院など)でも立体画像コンテンツの配信を可能とする目的で,赤外線通信方式を用いた立体画像伝送法を検討した.今後は実験データを解析し,理論的な検討を加え成果を国内外の学会に提案する予定である. 隠す
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