研究概要 |
情報化の進展により,後発国の製造技術は急速に先進国のそれに近づいている。平成17年度から平成19年度にかけて,中国の金型メーカーの設計・製造技術の実態に着目して調査、研究を行ってきた。金型の設計・製造技術にはある程度の経験年数が必要であるが,CAD・CAM・CAEといった情報技術により有る程度それが軽減できる。しかし,トータルな品質確保には情報機器を使用する場合においても依然として経験的知識が必要がある。にもかかわらず.中国金型メーカーの急速なキャッチアップの背景には,先進国の蓄積されたノウハウが情報機器を媒介として技術移転しているという観点から説明できる。しかしこの問題は深刻な知的所有件問題を含んでいる。第一に,そもそも依然として情報機器そのものソフトウエアがコピー製品としえ普及しているという問題がある。第二に,低コスト化を追求する日系セットメーカー等の金型ユーザーが品質を確保するために日系金型メーカーの図面情報等を第三者である中国金型メーカーに転用している問題である。こうした知的所有権に関わる深刻な問題が適正に処理されないまま中国の金型メーカーは日系ユーザー等との取引を続けることにより有る程度の経験を蓄積させ,その技術水準を上げてきている。一方で,日本の金型技術は依然として品質を担保する上では高い競争力を持っているというのも事実である。これは日本の製造業ひいては日本産業の今後を考える上でも重要な事実である。中国は世界の製造拠点であり,その中で日本の製造技術も依然として重要な役割を果たしてきている。こうした関係を鑑みたとき,日本側の対応として,金型に関する特許登録・実用新案登録・意匠登録・著作権登録・営業秘密扱い措置等の取り組みを意識的に強化し,中国でのビジネス拡大の機会を探る必要があることが明らかになった。現在,これらの成果の最終報告書を学会誌に投稿中である。
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