研究概要 |
富栄養化した湖沼の水質浄化対策を検討する上で,水域に適合した生態系モデルが必要となる。流動を伴う水域において生態系を取り扱うことは,生態系のみでは表層・低層・流入部・流出部など複数の区別が必要となり多段階の数値計算を行わなければならないため,複雑である。そこで本研究では,生態系モデルを粒子法による流動モデルと連携させ,水質評価のための複合モデルの構築を行い,粒子法の応用計算によって解いた。本粒子法では粒子のひとつひとつに生態系の構成要素である各生物種の生体濃度や物質濃度が保持され,生態系モデルと流動モデルによつて各粒子内の生体濃度,物質濃度,熱および粒子そのものの座標が推移することによる流動を加味したものである。たとえば,風の作用による影響は流動モデルと熱伝導モデルによってシミュレーションできる。 本モデルを構成する各モデルすなわち粒子間相互作用を適用した流動モデル,粒子内における生態系モデル,熱伝導モデル,日照量モデルおよび風作用モデルについて対象とする水系の初期値配置を配列化したデータ入力によって実行可能とした。風の作用および温度の影響を考慮した夏季環境下および冬季環境下の浅い湖および深い湖におけるMicrocystisによるアオコ発生,底質浮泥による栄養塩溶質のシミュレーションでは,実際の現象を定性的に表現できることを確認した。 本水質評価複合モデルは,今後の展開として自然的および人的現象への適用が期待できる。たとえば,生態系構成要素やその他の物理量の物質的・化学的・生物学的関連性をさらに導入することで,水域における赤潮などのシミュレーションを行うことにより自然的な現象に対する発生過程の解明および改善策立案のための定性的予測が可能である。
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