研究課題
若手研究(B)
本研究では、環境への人為的なインパクトが森林や流域環境に与える長期的な影響を予測できるモデルの構築することを目的とし、1)伐採後の経過年数に沿った植物体・土壌における炭素・養分の蓄積量の把握、2)伐採後の経過年数に沿った森林の生産量・養分循環量の把握、3)土壌-植物相互作用系を介した物質循環機構のメカニズムの解明、4)施業履歴など人為的インパクトの定量化および影響評価を統合し、流域環境の応答予測モデル作成と応用を行なった。本年度は、応答予測モデルの作成を中心に行った。また観測データから得られた成果の一部を学術論文としてとりまとめ、投稿予定である。これまでの研究で、シミュレーションによる多くの予測項目については、PnET-CNモデルの予測精度は高いが、一部の観測項目に関して予測値と大きく異なり、特に高齢林における土壌の窒素無機化速度や現存量の推定に問題があることが明らかとなった。樹木生理パラメーターについて、既存の文献などから再検討を行うことにより、予測精度が向上したが、高齢林での物質循環様式については十分な予測が行えないことが明らかとなった。人為インパクトにたいする長期的な応答を予測する上で、今後は高齢林における物質循環メカニズムの解明が望まれる。また本研究の調査地以外の地域においても、いくつかの物質循環パラメーターについてモデル適用の可能性を検討した。その結果、地域により既存のモデルだけでは十分な予測が行えない地域が存在することが示唆され、日本での適用に向けて物質循環の地域性を反映させた予測モデルの開発の必要性が明らかとなった。
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