研究概要 |
DNA複製阻害に対する損傷トレランス機構を解明する為、複製後修復で中心的な役割を果たすRAD18蛋白質の損傷応答を解析した。ヒトを含めたほ乳類細胞では、複製後修復の主要な経路は損傷乗り越え複製で、RAD18はこのときPCNAのモノユビキチン化を介して複製ポリメラーゼから損傷乗り越えポリメラーゼへのスイッチングを制御している。しかしながら、RAD18自身がどのようにして現場、損傷によって複製フォークが停止した場所に行っているかという重要な初期過程はわかっていない。RAD18蛋白質の損傷応答を調べる為に、レーザー照射装置と顕微鏡を組み合わせ細胞核の局所にDNA損傷を作り、修復蛋白質の集積と解離をリアルタイムで解析する実験系、in situ解析法を開発した。この方法に加え紫外線損傷を核の局所に作る方法を用い、RAD18の損傷部位への集積を可視化して解析した。RAD18は複製に依存せずに損傷に集積する機能と複製に依存して損傷部位に集積する機能を持ち、それぞれがRAD18のZnフィンガードメインとSAPドメインに依存する事を明らかにし、これらの結果をJBCに発表した(Nakajima et al.,2006,281・45,34687-95)。この二つの異なる損傷応答を含むRAD18の機能を解明する為に、RAD18の結合蛋白質の同定を試みた。細胞でのRAD18の高発現は致死的で、免疫沈降する為のタグの付いたRAD18の安定発現細胞を得る事は困難であったが、テトラサイクリンによる発現誘導系を用い、GFP融合RAD18安定発現細胞を樹立した。この細胞を用いRAD18の結合蛋白質を免疫沈降により精製し、LC-MS/MSにより精製されたタンパク質のアミノ酸配列を決定し、いくつかの候補蛋白質を同定した(未発表)。(760字)
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