研究概要 |
前年度ではハイブリッドナノ結晶に用いる最適なコアとして球状のC_<60>ナノ結晶を作製し、シェルとしてAgナノ粒子及びAuナノ粒子をC_<60>ナノ結晶表面に直接析出させる方法を見出し、コアーシェル構造を持つハイブリッドナノ結晶の作製に成功した。本年度は、より多種多様な形態を持つC_<60>ナノ結晶の作製を行い、これらを用いてAuとのハイブリッド化が可能かどうか検討を行った。 再沈法における良溶媒・貧溶媒の組み合わせをCS_2(0.3mM,200μl)・EtOH(10ml)とすることで単分散な正8面体を有するC_<60>ナノ結晶を得た。これら分散液80mlを10mlまで濃縮しHAuCl_4(22.2mM,0.5ml)を加え40℃で2時間熱処理することにより、正8面体C_<60>ナノ結晶表面に直接Auナノ粒子を析出させコアーシェル構造を有するハイブリッドナノ結晶の作製に成功した。また良溶媒・貧溶媒の組み合わせをm-xylene(2mM,200μl)・2-propanol(10ml)に変えるとロッド状C_<60>ナノ結晶が作製可能なことを見出した。これら分散液に直接HAuCl_4(22.2mM,0.5ml)を加え40℃で2時間熱処理を行った場合、その表面及び分散液中にAuナノ粒子の析出は確認できなかったが、得られたロッド状C_<60>ナノ結晶をCS_2(300μl)+EtOH(10ml)混合溶媒に再分散させ、そこへHAuCl_4(22.2mM,0.5ml)を加え40℃で2時間熱処理を行った場合、その表面にAuナノ粒子の析出を確認した。ここでEtOH(10ml)のみに再分散した場合は、Auナノ粒子の析出が確認できなかったことからC_<60>ナノ結晶表面にAuナノ粒子を析出させるためには、CS_2が関与していることが確認できた。同じように良溶媒・貧溶媒の組み合わせをp-xylene(3mM,200μl)・1-propanol(10m1)とした場合、6角板状のC_<60>ナノ結晶が得られこれらを先程と同じ条件であるCS_2(300μl)+EtOH(10ml)混合溶媒に再分散させ、そこへHAuCl_4(22.2mM,0.5ml)を加え40℃で2時間熱処理する事によりハイブリッド化されたC_<60>ナノ結晶を得ることができた。本研究により様々な形態を持つC_<60>ナノ結晶の作製が可能であることを見出したが、未だその要因が判明していない。今後は、これら要因を明らかにする必要がある。また、同時にAuとのハイブリッド化においてもCS_2の関与がどの様な反応で行われているかの解明がなされておらず、今後の課題である。
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