研究概要 |
本研究では,固定化された脂質ナノチューブネットワーク構造を新規DDSとして用いるための基礎データを収集すること目的としている.これまでに,親水性ゲル中に固定化された脂質ナノチューブネットワークの安定性ならびに外部刺激(温度,pH,コレステロールを一定割合で含むチューブネットワークに対するゲル外部からのシクロデキストリン添加等)による断片化による構造安定性の変化の調査を行った.これらの挙動にはゲルの強度と脂質膜の状態が大きく影響することが予想されたため,各サンプルの脂質膜および内水相の状態を確認するために随時,蛍光顕微鏡による直接観察を行った結果,ゲル強度および脂質濃度の初期条件に明確に依存したネットワーク形成能の違いが確認された.さらに,蛍光分光光度計を用いて,微量の蛍光脂質(脂溶性薬物モデル)により予めラベルした脂質チューブのゲル内へのネットワークの保持効率と,外部刺激による構造の崩壊〜外部溶液中への放出挙動を測定した.このネットワークを形成したチューブ内部には巨大分子(DNA,166kbp)をも封入可能であることが直接観察によって示された.また,封入されたDNA分子が,単一分子レベルでブラウン運動をおこなっている様子が高感度撮影により確認され,チューブ内部に親水性の空間が保持されていることが明らかになった.これらの結果を論文としてまとめたものをMHS2006にて発表した.
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