研究課題
若手研究(B)
DNA二重鎖は、電荷移動のキャリアとなり得ることが示唆されてから、ナノサイズの導線として応用できるのではないかと期待されている。従来までの研究から、DNA上電荷移動反応は、特異的な三重鎖形成により大きく抑制されることが分かっていた。本研究では、三重鎖形成制御を通じて、DNA上電荷移動を可逆的に制御する分子システムの構築を試みている。平成17年度度は、温度変化による三重鎖形成制御を用いて、電荷移動制御に成功した。本年度は、pH変化に伴う三重鎖形成および解離を用いて、DNA電荷移動の制御を試みた。DNA三重鎖はシトシン塩基部のプロトネーションを経て安定に形成される。従って、三重鎖形成には酸性条件が必要となる一方、中性条件および塩基性条件では、速やかに二重鎖へと解離する。まず、pH5.5で、DNA上遠隔光酸化反応を調べたところ、DNA上の電荷移動に伴うDNA切断はほとんど起こらなかった。このことは、安定に三重鎖構造が形成された結果、電荷移動が効果的に抑制されたことを示している。一方、pHを7.7にあげて、同様の実験を行なうと電荷移動を示すDNAの切断が確認された。このことは、pHを塩基性にすることによって、三重鎖が二重鎖へと解離し、電荷移動効率が回復したことを示している。続いて、金電極上に固定化したDNA上を流れる電流を直接測定することによって、DNA上電荷移動に対するpH効果を調べた。pH5.5および7.7の条件で、電流量を測定したところ、切断実験と同じく酸性条件では、電流はあまり流れず、塩基性にすることによって流れる電流が増加した。また、pH条件を塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を用いて、交互に変えたところ、pHに対応して電流量が上下することがわかった。すなわち、pHを変化させることによってDNA上電荷移動のオン・オフスイッチを構築できることを実証した。
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