研究概要 |
2006年の研究では,企業の潜在的財務指標の理論モデルの構築,そのモデルの検証について分析した.まず第1に,次の2つの論文がジャーナルに掲載された(一つは掲載決定).一つはKyoto Economic Reviewに掲載された論文であり,企業の収益率を正規過程から平均回帰過程に従うモデルに拡張し,投資プロジェクト評価モデルを構築した研究である.もう一つはEuropean Journal of Operational Researchに掲載が決定した論文であり,情報の非完備性を仮定した上で企業の投資プロジェクト評価モデルを構築した研究である.なお,この研究を簡略した内容は,シグマベイスキャピタル社から2006年10月に刊行された書籍「リアルオプションと経営戦略」の第6章に掲載されている.第2に,2005年度の研究から引き続き,次の2つの研究をすすめている.一つは,企業の無形資産評価について,首都大学・木島教授および明治大学・乾助教授と共同で研究をすすめており,アイスランド・レイキャビックで開催された欧州オペレーションリサーチ学会にてその研究内容を発表した.もう一つは,企業内のエージェンシー問題(所有者と経営者の利害対立)を考慮した投資プロジェクト評価モデルの構築であり,オーストラリア・シドニーで開催されたQuantitative Methods in Finance Conferenceにてその研究内容を発表した.第3に,企業の財務データを用いて,当該モデルのパラメータを推定,企業の潜在的財務指標を推定した.結論としては,構築された当該モデルは,企業の投資戦略を考察する上で有益な指標を提供するモデルと考えられる.この内容については,さらなる研究をすすめ,来年度中に論文として纏める予定である.最後に,2年間における当該研究内容とその成果を,海外の3つの大学に短期滞在して,それぞれの専門研究者と議論した.具体的には,2006年7月にスウェーデン・ストックホルム経済大学に1週間滞在しビヨルク(Bjork)教授,2007年8月にスコットランド・スターリング大学に1週間滞在しタブナー(Tabner)講師,2007年3月に中国・香港科技大学に1週間滞在し郭(Kwok)教授と当該研究内容に関して意見交換・議論をした.さらに,郭(Kwok)教授とは共同研究を開始している.
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