研究概要 |
今年度は,偏波観測機能を付加したシステムを運用し,降雨イベントの継続的観測と降雨推定アルゴリズム,降雨減衰補正アルゴリズムの開発を行った。レーダの送信には,送信偏波面を45度傾ける方式を採用し,受信では,水平,垂直偏波をパルス毎に切り替えることにより,受信信号を記録する。このようにして受信された信号を,パルス圧縮処理し,水平及び垂直レーダ反射因子,差分レーダ反射因子,偏波間位相差,偏波間相関係数の導出を行った。求められた差分レーダ反射因子と水平偏波レーダ反射因子から,降雨量を求めるアルゴリズムを,共同研究先である北海道大学低温科学研究所の2Dビデオディスドロメータデータを用いて,非線形最小二乗法により作成した結果,論文等で発表されているCバンド或いはXバンドにおける推定降雨量に比して,精度の良い降水量が得られることを示した。 また,これらの実験結果を元に,定常運用可能な3次元スキャンを実現した新たな小型高分解能レーダのシステム設計を実施した。そして,ドップラー速度,標準偏差を精度良く,早く処理出来るアルゴリズムを開発,実装を行った。 さらに,本レーダのようにバイスタティック方式によるパルス圧縮処理を行う場合,レンジサイドローブとSNロスが問題となる。この問題を根本的に解決する適応型パルス圧縮手法を導入,実験およびシミュレーションによって検討を行った結果,これまでに提案されている手法に比して,低いレンジサイドローブレベルと少ないSNロスを実現できることが示された。
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