研究概要 |
都市近郊斜面での急傾斜地崩壊による甚大な災害は毎年報告されている,急傾斜地崩壊の主な素因は台風等の継続的集中豪雨による地下水位上昇に伴う地盤強度の減少であるが,国道整備・高速道路・ダム等の山間部への近年の建設域の拡大は,地盤の不安定性を誘発する原因となっており,人為開発に対する適切な急傾斜地崩壊災害防止工の検討は被害抑制には不可欠である.同時に,危険地域の設定,避難体制の確立といったソフト面での災害回避の対応策も重要であり,ハザードマップの作成や物理的根拠に基づいて開発された数値シミュレーションによる適切な被災域予測や住民に対する分かり易い土砂災害の説明が求められている. 近年の急速なコンピュータの演算処理能力向上の恩恵から,Lagrange型シミュレーション手法の一つである3次元個別要素法型モデルによる数十メートルオーダーの大規模計算が実施されている.このような個別要素法型モデルによる実スケール規模を対象とした数値シミュレーション結果のアニメーションは,被災状況を静的ではなく動的に認識し易く,常日頃から土砂災害危険区域の住民が防災の意識を持ち続けるための支援ツールとして有効であると考える.以上を鑑み,本年度研究では,防災意識向上支援ツール開発への取り組みの一環として,3次元個別要素法型の粒状体モデルによる,急傾斜地崩壊挙動を予測するための数値シミュレーションコードの開発に取り組んだ.なお,急傾斜地崩壊後の映像には崩壊した土砂・石礫のみならず,流木群の散乱した状況が確認される事実から,樹木を含めた崩壊予測コードの開発に取り組んだ. 一方で,昨年より継続開発を進めている固液混相流モデルのコードを水中投入土砂挙動に対して適用し,コードが有する再現性機能の確認も実施した.
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