研究概要 |
2004年12月26日に発生したスマトラ島地震(M9.0〜9.3)について、地震波ならびに津波から独立に推定された断層モデルを用いて、インド洋津波の発生および伝播過程の詳細な再現計算を行い、M9クラスの海溝型地震により発生する津波像を明らかにした。それぞれの断層モデルから計算される津波は、すべり量の違いにより波高に差異が見られた。さらに断層運動の動的効果ならびに破壊伝播の影響を調べるために津波計算の初期条件を変化させた。その結果、インド洋を伝播する津波への断層の動的効果の寄与は小さいが,断層面の破壊領域が大きいため断層の破壊過程が津波の到達時刻に影響することが明らかとなった。これらの研究成果は国内外の学術誌に掲載された。 さらに、2006年11月15日に千島列島沖で発生したM8.3の海溝型地震に伴って発生した津波ならびに関連現象の解明のために,JAMSTECの「釧路・十勝沖海底地震総合観測システム」の観測データの精査を実施した。その結果、地震発生から約1時間後に、海底ケーブル観測システムに含まれる3台の海底津波計で振幅5cmの津波が観測された。これは北海道の最東端に位置する花咲よりも10分以上早い観測である。これは釧路・十勝沖の「海底ケーブル観測システム」が、千島海溝沿いで発生する津波に対して、わが国で最も早い津波観測を可能とするファシリティであることを示唆している。また、地震時には層別流向流速計(ADCP)も稼働していたが、津波伝播に関連する流速変化や環境変化は観測されなかった。現在のところ、既設ADCPにより津波シグナルを検知するのは、最小観測流速のしきい値の問題から困難である。この研究成果は、速報として国際会議で発表した。
|