研究概要 |
平成19年度には,合衆国における人種差別撤廃やマイノリティの地位向上の試み,特に公民権運動へのユダヤ系アメリカ人の参加やその際の黒人との関係に関して,特に以下の研究を行った。 1,アメリカ合衆国における世俗的ユダヤ人大学は,差別によりユダヤ人学生がキリスト教系あるいはその他の大学から入学許可を得ることが困難であることへの対処としてその設立の是非が議論されたため,「るつぼ」がよいのか「文化多元主義」がよいのかといった,ユダヤ人たちのアメリカの人種・民族的統合の理想が強く反映されている。本研究では,合衆国におけるほぼ唯一で最初の世俗的ユダヤ人大学であり,ユダヤ人諸団体によって高等教育における差別の問題と平行して議論されたブランダイス大学の創設とその過程について検討した。その結果,ブランダイス大学が志願者の人種・宗教を考慮せずに入学選抜を行う(=差別を行わない)というカラー・ブラインド(color blind=肌の色の違いを無視する)的考えが大学設立の際の資金集めやユダヤ人たちからの賛同を得るための原動力となっていたことが明らかになった。この間の経緯については単著論文を発表した。 2,交付申請書においては,1950年代後半から1960年代にかけてのアメリカ合衆国北部における人種隔離教育撤廃の動きに向けてのユダヤ人の動きに関する二次資料の収集と分析を行う予定としていた。この課題に関する一次資料は日本国内に所蔵はないとほぼ推測されるため,アメリカ?ユダヤ人委員会(ニューヨーク市)など在米ユダヤ人諸団体の資料室やニューヨーク公立図書館において,また,上記1に関してはブランダイス大学文書館において資料調査?収集を行った。 3,本研究と博士論文の成果を総合して,2008年度中に著書(単著)を発行する予定である。
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