研究概要 |
本年度は,ワーク・ファミリー・コンフリクトヘの対処過程について,仕事領域における要因との関連を中心に検討した。 まず,昨年度に作成した「仕事領域でのワーク・ファミリー・コンフリクト対処行動尺度」を用いて,仕事領域における諸要因(支援的な上司,ファミリー・アンフレンドリーな職場風土)と対処行動(職場内役割調整対処,仕事役割低減対処,仕事役割充実対処)との関連を,性別や勤務状況別に検討した。 その結果,支援的な上司がいる場合に,職場内役割調整対処(同僚や上司,部下と仕事の量や内容を互いに調整して,対処する)や仕事役割充実対処(仕事の量を減らして対処する)が行われやすいことが明らかとなった。この傾向には,性別や勤務状況による違いは見られなかった。したがって多くの共働き男女は,支援的な上司がいれぱ,仕事領域においてもワーク・ファミリー・コンフリクトに対処しやすいものと推測される。 一方,ファミリー・アンフレンドリーな職場風土が対処に結ぴつく結果は,わずかしか得られなかった。風土は職場環境としては重要なものと考えられるが,直接的な影響力をもつ要因ではないものと考えられた。 この成果は,経営行動科学学会第9回大会において発表し,他の参加者と議論を深めた。 また,国際学会Academy of Managementに参加し,アメリカを中心とする海外の最新のワーク・ファミリー・コンフリクト研究について調査した。その結果,最近の動向として,ワーク・ファミリー・コンフリクトのネガティブな影響のみを検討するのではなく,そのポジティブな影響も検討され始めていること,それにはコンフリクトヘの対処の検討も含まれていること,多文化間比較が行われていること,などが見られた。 以上の調査結果を踏まえて,現在は論文化を進めている。
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