研究概要 |
本研究の目的は,子ども期における「身体」のジェンダー化の諸側面を,社会的・文化的文脈との関連で実証的に明らかにすることである。研究最終年にあたる本年度の研究実績は次のとおりである。 第一に,初年度に実施した観察調査で得たビデオデータのうち,「家族ごっこ」の場面を中心に,身体技法などの分析を行った。子どもたちは,家族の中でのさまざまな役割を象徴するような身体技法を用いて,遊びを行っていた。また,ある「家族ごっこ」においては,「家族」のディスコースと「ヒーローごっこ」のディスコースが併存しており,子どもたちのうち,「赤ちゃん役」であり「ヒーロー」でもあった男の子数名は,それをうまく演じ分けていた。 第二に,子どもを対象としたインタビュー調査について,詳細な分析を行った。子どものジェンダー選好およびジェンダー規範に対する解釈実践に注目した。子どもたちは,社会における「二分法的なジェンダー」の存在を自明のものとして,それに即した解釈実践を行っていた。一方で,一部の子どもたちは,ジェンダーの境界線を越える実践を試みていた。 第三に,保育士・幼稚園教師(以下,保育者とする)を対象にしたインタビュー調査の結果について,詳細な分析を行った。子どものジェンダー実践・解釈に対する保育者の解釈に注目した。保育者たちは,子どもをジェンダーレスであるととらえる一方,子ども自身によるジェンダー化された解釈等についても,子どもたちにはそのような傾向があると考えていた。 これらの結果について,学会報告および論文執筆を行った。また,3年間におよぶ本研究の結果については,報告書としてまとめた。
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