研究課題/領域番号 |
17720017
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
遠藤 衣穂 東京芸術大学, 音楽学部, 非常勤講師 (50376927)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2007年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2006年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 芸術諸学 / 西洋音楽史学 / 音楽学 / キリスト教音楽 / 中世・ルネサンス音楽 / ミサ曲 / 15世紀 |
研究概要 |
本年度は、5つのミサ通常文楽章の中で、グロリアとクレド、サンクトゥスとアニュス・デイという2つのミサ楽章を対にして組ミサを構成することが15世紀初期に主流となった要因について検討した。 まず典礼における式次第の構成との関係に着目して調査を行った。ローマ・カトリック教会におけるミサの式次第は時代によって拡大されたり縮小されたりしてきたが、カトリック教会の発展とともに典礼が体系化され、13世紀頃までには現代のミサとほぼ同じ形になった。すなわち、入祭唱からクレドまでの「言葉の典礼」(前半部分)と、奉献唱からイテ・ミサ・エストまでの「感謝の典礼」(後半部分)から構成された。グロリアは前半部分の冒頭、クレドは前半部分の最後に歌われ、これら2つの楽章が「言葉の典礼」の音楽を支える重要な枠組みを形成していたのではないかと考えられる。一方、サンクトゥスとアニュス・デイは典礼の後半部分で歌われ、ミサのクライマックスである聖体拝領へ向けて徐々に典礼を盛り上げるという点で同じ役割を担っていたと考えられる。 15世紀初期のミサ曲の重要な特質のひとつとして、グロリアークレドとサンクトクスーアニュス・デイの対の音楽的関連性の度合いや質が異なるという問題がある。従来、音楽素材によるまとまりのない組ミサは、写本の筆写者が既存のミサ楽章を組み合わせて作ったもので、作曲者の意図を反映していないと考えられてきたため、肯定的に評価されることはなかった。しかし、上記の特質がミサ通常文聖歌の伝統に従って作曲あるいは編纂された当時の正統なミサ曲構成法のひとつであったという新たな視点に立って問題を捉え直してみると、その歴史的な意義が浮き彫りになることがわかった。また、音楽素材による楽章間の連関が生まれる過程で、まずサンクトゥスとアニュス・デイの聖歌に内包された類似性が多声ミサ楽章の作曲様式に影響を及ぼし、さらに15世紀初期になると、そもそも聖歌の段階で類似性のないグロリアとクレドにもそのような作曲様式が適用されるに至ったという仮説が導かれた。
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