研究概要 |
本研究はソヴィエト文化の重要な要素と考えられる「こども」のイメージが,スターリン体制下でどのように表象されたのかという問題を扱ったものである。研究の初年度にあたる2005年度は,ソ連児童文学についての概括的な調査を行った。2年目にあたる2006年度は,全体主義体制における「こども」の位置づけを考えるため,軍やスポーツの世界の英雄像について調査を行った。スターリン体制下のソ連では,それら英雄が国家の息子としてみなされていたからである。研究の最終年度にあたる2007年度もこの調査を継続し,成果として1930年代に活躍した北極探検家パパーニンについての論文「パパーニンの北極漂流生活とその文学的表象」を,『稚内北星学園大学紀要』8号に発表した。この論文はパパーニンを描いた詩や伝記の分析をもとに,ソ連社会における指導者と英雄と人民の関係について,父と子というイメージを念頭に置きながら論じたものである。 また,ソヴィエトのアニメ映画や児童映画に関する映像資料を収集し,ソ連の文学作品やディズニーなどソ連国外の映像作品との比較を行いつつ,文化的コンテクストへの位置づけを行った。 以上の過程で,9月と11月に北海道大学附属図書館(札幌)で,12月にロシア国立図書館(モスクワおよびサンクトペテルブルグ)で,それぞれ資料調査を行っている。また,10月に千葉大学で,12月に東京外国語大学で,国内の研究者との情報交換を行った。
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