研究課題/領域番号 |
17720107
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
日本語学
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐野 宏 福岡大学, 人文学部, 准教授 (50352224)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2007年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
2006年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 字余り / 脱落想定表記 / 歌体 / 定型 / 和歌 / 歌謡 / 書記 / 表記 / 母音脱落現象 / 表記構造 / 延音 / 和歌の定型 / 句内属性 / 人麻呂歌集 / 仮名 |
研究概要 |
萬葉集の字余りと脱落想定表記との関係から、和歌の定型の枠組みについてその成立過程を考えた。本件課題において考察した一つの到達点として、次のことが言い得るものと考える。 まず、古代日本語における「歌」の表記の成立は、口承された音声的音楽的なウタの旋律を記憶に留めてみ「歌詞」を記すところから出発した。これはウタから旋律構造と歌詞とを分離したことを示す。歌詞を唱^^<うた>う-唱歌する-場合、ウタの旋律構造が歌詞の表記に投射される。このとき旋律上のフレームによって、表記上の文字列が分節されたと考えられる。それは「唱うための分節化」であったが、そのことが旋律構造を、表記上に「句」の構造として了解させる契機となった。「句」構造とは旋律構造を特定する-その旋律構造に歌詞を載せる-ための、表記上に了解された読みの枠組みである。 その歌詞の表記法は、恐らくは「一字一音式の仮名表記」によって書記されたと考えられる。この表記法の選択と、唱うことにおいて句構造を捉えようとする読みの了解が「句」という単位が文字数によって把握されることを結果的に導いたと考えられる。音数律が表記上の句構造指標として成立したと考えられる。従って、音数律は音声上のウタの実態には存在しないとみてまず問題がない。 句構造を了解するところには、声の「ウタ」は、それを文字によって写像した文字の「歌」を自身の今ひとつの姿としてもったことになる。それが「声」ならぬ「韻」をもった詩形としての「歌」である。このとき、声楽上の「ウタ」の定型と、表記上の「歌」の定型との二重構造ぶ生じている。 書かれるウタとしての「歌」の文体様式という構造は、個人によるその構造の変更を抑制している。これが、現在我々がいうところの57定型の枠組みである。ところが、定型は今ひとつある。それは唱われる「歌」としての、声の「ウタ」の旋律構造である。それに対する了解は、「唱えること」においての表記上に幅-自由度-をもっている。つまり、文体様式が拘束する「歌」の構造=歌体が、旋律構造への拡散を抑制しっつあるところに、字余り句があり、脱落想定表記があると見通せる。
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