研究課題/領域番号 |
17720115
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語学
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
縄田 裕幸 島根大学, 教育学部, 助教授 (00325036)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2006年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 文法化 / パラメター変化 / 法助動詞 / 原理・パラメター理論 / to不定詞 / 言語変化 / 脱文法化 / T-to-C移動 / 分散形態論 / 音韻部門 / 経済性 |
研究概要 |
本研究の目的は、英語史において法助動詞の文法化が生じたメカニズムを実証的・理論的に明らかにすることである。具体的には、法助動詞の文法化に関する記述的資料を整備し、それをもとに原理・パラメター理論の枠組みで文法化の仕組みについての新たな理論を開発した。さらに文法化とパラメター変化の関係について考察することで言語変化をダイナミックに説明することのできる文法モデルを構築することを目指した。 この目的を達するため、今年度は非定形節で法助動詞と同様の機能を果たす不定詞標識toについて研究を進めた。不定詞標識toは、初期中英語までは後続する不定詞動詞に隣接していなければならなかったが、後期中英語以降は不定詞動詞との間に副詞などの介在を許すようになった。これは、独立した語が接語や接辞へと変化するという文法化の一般的傾向とは逆の変化であり、それゆえ先行研究においては不定詞標識toの変化は「脱文法化」のまれな事例として見なされることもあった。 しかしながら、本研究の結果、不定詞標識toの変化は脱文法化ではなく、toは英語史を通して独立した機能的範疇を構成することが明らかとなった。この結論は、近年の統語理論で仮定されているT-to-C移動と、本研究で提案した「外項の一般化」によりもたらされる。これらが与えられると、不定詞屈折接辞が外項として機能していた初期中英語までは不定詞動詞がtoのあるC位置まで義務的に移動し、それによってtoと不定詞動詞の隣接性効果がもたらされる。しかし後期中英語以降は外項が語彙的要素によって具現化されるようになったため、不定詞動詞のCへの移動が消失し、隣接性効果も失われた。この変化は主として不定詞屈折接辞の衰退によってもたらされたものであり、to自体のステイタスは変化しなかった。 従来の文法化理論の反例とされた事象に対して原理的な説明を与えたことで、言語理論に対して貢献を行った。
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