研究概要 |
研究最終年度となった平成19年度は,研究初年度及び次年度に収集したデータに統計分析を施し(一部は既に分析済み),さらにその結果を公表する目的で,海外及び国内にて研究発表を行った。さらに,最終年度後半には,これまでの3ヵ年の研究成果の総括する目的で,研究成果報告書を作成した。 本研究課題の中心テーマであった学習観とその周辺要因を含めた潜在変数モデルは一定の水準で収集したデータと適合し,学習動機要因と学習方略要因の間に学習観を介在させることにより,目的変数である学習方略要因の予測の精度が上がることが示された。このことは,学習観に対する教育的介入という操作によって,学習方略を変容させることができることを示唆している。 過去経験(本研究で扱った変数は「小学校英語教育経験」と「大学入学以前の海外滞在経験」の2つ)が,どの程度その後の学習観や学習行動に影響を及ぼしているのかという観点でカテゴリカル回帰分析を行った。結果,本研究の調査参加者に関する限り,大学入学以前の海外滞在経験のみが学習観と学習方略に有意な影響を及ぼしていることがわかった。 本研究結果に関する限り,小学校において英語教育を受けたとしても,そのこと自体では,数年後,どのように大学で英語を学ぶかという行動の予測はできないことを考えると,海外留学など実際に英語を日常生活で使用しなければならないという切迫感や必要性というこれまでも議論されてきた根本的な英語教育の問題が,学習者の英語学習行動を理解し,かつ効果的に教育を行う上で重要な課題であることが改めて確認されたといえる。
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