1.概要 今回の研究では、古代の窯道具について2カ年を通じて実際の資料を実見し、また報告書などの文献を通じての資料集成・分析を行った。また、その成果を論文として公表している。 2.成果 『大阪歴史博物館研究紀要』第5号に投稿した論文「古代窯道具の基礎的検討-愛知県域を対象として-」では、研究成果のうち、愛知県域を中心とする内容をまとめた。これまであまり着目されることのなかった窯道具について、基礎的な集成作業を行い、奈良時代から平安時代へと至る変遷と分布をまとめることができた。集成結果の分析から、奈良三彩に連なる鉛釉陶器系の窯道具、須恵器系の窯道具の存在が指摘できた。そして、愛知県域においては須恵器系の窯道具の中に鉛釉陶器系の窯道具が導入され、さらに両者が混交する形で灰釉陶器に使用される窯道具のセットが生み出されていることが判明した。その結果、今回の研究における最たる成果として、奈良三彩から平安緑釉へ、そして灰釉陶器という技術導入の過程を、窯道具のあり方からも確認することができた。 3.今後の展望 今回の検討の範囲では、滋賀県域・山口県域など施釉陶器を生産した他地域に対する調査を行いながらも、愛知県域についてのデータのみしか公表することができていない。今後はこれら発表できていない成果についても、順次論文等の形で公表してゆく予定である。また、須恵器生産との関連など窯業製品をまたいだ調査、韓国など周辺地域でのあり方など、さらなる研究を通じて、日本古代における窯業生産のあり方についてさらに研究を進める予定である。
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