研究概要 |
2007年4月〜7月,駒澤大学図書館,早稲田大学図書館,書店などにおいて,中国やアジア地域の農山村および少数民族居住地域における地域社会や生活文化などに関する文献資料を収集した。5月にはジェトロ・アジア経済研究所の図書館へ2回出張し,中国の統計資料や地図資料を収集した。 9月から2008年2月にかけては,引き続き文献資料の収集を進めるとともに,これまで3年間の研究の総括の作業を進めた。その一環として,9月に,これまでの研究を「中国農村における回族の地域社会の研究-空間論的アプローチ-」と題する博士学位論文としてまとめ,駒澤大学大学院人文科学研究科に提出した。そして,2008年3月に学位が授与された。 地域社会やコミュニティの概念には,社会的・文化的同質性,つまり構成員の共同性のみならず,共同性が適応される範域という空間的側面が含意されているにもかかわらず,これまで,本研究のような,人文地理学の立場からの空間的アプローチを用いて,中国内陸部におけるイスラム系少数民族の地域社会の特徴と変容を考察した研究はほとんど行なわれてこなかった。本研究によって,博士論文という形で成果をまとめることができ,回族地域社会の持続と変容,重層性,つながりと役割などの多面的な性質について理解を深めることができた。このようなテーマは,地理学のみならず他の学問分野においても,また日本のみならず中国や欧米などにおいても,これまで十分に検討されてこなかったことから,本研究によって,学界に対して一定の貢献を果たすことができたと考えられる。
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