研究課題/領域番号 |
17730007
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎法学
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
奥田 進一 拓殖大学, 政経学部, 助教授 (60365864)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2006年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 集団所有権 / 請負経営権 / 公益信託 / 入会権 |
研究概要 |
平成18年度の夏の調査においては、ホロンバイル盟の草原における土地利用状況について、徹底的な聞き取り調査と、各地域ごとの土地利用に関する法律・法規・政策の特徴を明確にすることができた。また、内モンゴル地域において草原保護と法律普及を主たる活動としている「NGO曽経草原」の協力を得て、複数の土地紛争の現場にも足を運び、紛争の当事者から直接聞き取り調査を行うことができた。 上記調査から得られた情報をもとに、草原の集団所有権および請負経営権およびそれらの利用に対する、現地政府および現地住民の意識および実際の状況が明確になった。そもそも、集団所有権に関しては、現地の集団所有組織(牧業経済組織)が権利主体となって所有権証を有しているが、近時になって、現地政府がこれを徴用または無効にする紛争が多発している。法的には認められない行為であるが、現地ではこのような違法行為が日常化し、その結果として農業開発や鉱山開発によって荒廃する草原が激増している。このような状況が多発していることの原因としては、登記制度の不明確さが指摘できよう。2007年3月に採択された物権法においては、集団所有に係る土地の権利発生要件として登記を要求しているが、すでに権利証の交付された土地についてあらためて登記が必要なのか否かについては明確にされておらず、登記状況の調査がさらに必要であるとの認識を強く有するに至った。 上記の状況に対して、現地の集団所有組織や牧民も無為無策なわけではなく、わが国の農業生産法人に類似する組織を立ち上げて、大規模集約型の牧畜業を営む地域や、個々の牧民が有している請負経営権を投資財として観光型牧場を展開し、いわゆるエコ・ツーリズムを実践して、都市住民や外国人観光客を誘導するような組織も構築されている。このような経営手法の根底に流れているものは、英国のフットパスやナショナル・トラスト運動に相通じるものがあり、公益信託による草原保護と沙漠化防止策が中国においても可能性を輸しているとする、研究代表者の仮説はほぼ立証されたといえよう。
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