平成18年度においては、憲法理論の憲法教育学としての任務を強調する見解および精神科学的教育学との関係を検討する作業、および、ドイツ公法学における重要概念がもつ精神科学的含意について検討する作業を、それぞれ行った。まず、第一の作業においては、ワイマール期および戦後ドイツの代表的公法学者ルドルフ・スメントと、同時期の代表的教育学者テオドール・リットの、それぞれの見解を、社会学的側面ではなく現象学的側面から検討を加えた。この検討結果は近く公表予定であるが、その一部については、ドイツの最新の理論状況における、現在進行中の欧州統合プロセスでのスメント憲法理論の役割を検討したものとして、すでに公表している。つぎに、第二の作業においては、ドイツ公法学の精神科学的背景を、職業官僚制を素材にして調査した。具体的には、ワイマール期から戦後にかけての代表的公法学者アルノルト・ケットゲンの、職業官僚制に関する見解に検討を加えた。これにより、職業官僚制は、人権と制度の対抗関係における後者の側面からこれを把握できること、しかも、この制度としての官僚制には、ケットゲン独自の国家理念、神学的倫理学、精神科学哲学との関連性を見て取ることができること、さらには、こうした制度と理念の関連性はその他の制度と把握される事象にも探求可能であること、がそれぞれ解明された。この検討結果の一部はすでに脱稿済みであり、近く公刊の予定である。
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